六角圧着用ダイス | クルマ屋 奮闘記

六角圧着用ダイス



1955年製 Porsche 356 Pre-A 、並行輸入 型式不明・・・・・
新規登録のための予備検査受験合格を、なるべくならば低予算でというスーパータスク降臨!



しかしこの車両、ボディー外観・ウインドガラス・シート・内張り・フロアマット・エンジン本体といった
表っ面、うわべ部分は一応かっちりレストアされていたものの、その実、板子一枚下は地獄?!^^;

 恐々フロアカーペットをめくってみると、半分腐った雑な造りのスノコが置いてあって底面合っておらずゴトゴト。。
 その更に下は、大昔に黒いタール状の錆止め剤でも塗られたっきり? 一面ジャリジャリのネチャネチャのマッチャッチャ!
 キャブレターは新調したてのようなのに、燃料タンクと燃料パイプの内面は錆だらけ、燃料コックはガソリン漏れで・・・
 スロットルペダル~リンク機構はガタだらけのため、アクセル目一杯踏んでも実際のスロットルは半分も開かないし・・・
 サイドレバーのラチェットもガタガタで、しかも一番良く使うらへんの歯は、角が摩耗しすぎて滑ってしまうし・・・
 配線関係は猫が遊んだあとの毛糸球状態? 無残なまでにゴチャゴチャで、当然のようにヘッドライトも不点灯・・・
 その他、キングピンのガタが大きすぎたり、ハブベアリングもダメだったりと書ききれないくらい満身創痍!
 1990年代の旧車バブル期の産物なのかも知れません。 以来、約1月余り大奮闘することとなったのでありました。

難題山積! されど剣が峰を乗り越えて、無事見事に予備検査一発合格♪

 何れもブログ記事になりそうな。 京都運輸支局での晴舞台まで載せたりして?(笑)
 いえいえ、私は慎ましく、一番印象深いヘッドライト点灯不良修理についてだけ軽く触れておきましょう。
 正直このような車両への対処能力は、せいぜい2月に1台が天。 それ以上入庫してくると降参してしまいますからww




このポルシェ356のヘッドライト系統をみていくと、不点灯の原因はスイッチ裏の配線不良でした。

 20世紀中頃くらいまでの、非常にレトロなクルマの場合、ヘッドライト用のリレーなど元々使われておらぬケースもあり、
 そのような場合、直列接続のヘッドライトスイッチに、ヘッドライト左右2個分の大電流がダイレクトに流れてしまうのです。
 とはいってもノーマルの 60/55W ハロゲン球ならハイロー同時点灯でもせぬ限り、実質流れるのは高々 6 ~ 10A。
 2.0sq程度の少し太め配線で十分足りてしまう数値ではあるのですが・・・
 これ位の電流値からは僅かな接触不良でも焼損トラブルを招くので、コネクタ等、各接続部には厳格さが求められます。

 後の 356 A ・B ・C シリーズの先駆けとなった Pre-Aモデルのヘッドライトスイッチは、裏の配線が差込式のギボシ端子。
 これでは何度も脱着重ねたり、何十年もの歳月が経つと、前述の焼損トラブルということになってしまうのも当然!
 ( 後継シリーズ用のヘッドライトスイッチは、ネジ止め端子に改良されています。)

 焼け焦げた部分を観察すると、端子がゴソゴソ。
 以前に誰かが修理して端子交換したのか数ヶ所だけ、オス・メスの径が一致してませんでした。
 まぁそれもそのはず。たかがギボシと侮るべからず。 どこでも売ってる一般的なギボシ端子とは随分異なる径・形状。
 仕方がないので、見本送って適合する品を探してもらい、待つこと数日。
 無事これならという補修用端子が見つかったのですが・・・
 そのものズバリの欧州規格の圧着端子?!

 右の画像は、日本で一般的な圧着工具。
 半円で抱き込んで四角いチョボで押しつぶすタイプ。

 これに対して欧州の場合、六角圧着方式が広く採用されており
 圧着工具の金型は下の画像のようになります。

これ・・・
手を尽して探しても、手軽で安価な品がどうしても見つからないんです。



 金属材料には、「引張り強さ」 「伸び」 「絞り」 「硬さ」 「衝撃値」 「疲労限」 「残留応力」などの強度特性があるのですが、
 平たく言うと、ぐにゃっと押し曲げる感じの日本式圧着端子は、割れないよう柔軟性の高い合金が使われるのに対し、
 絞りこむ感じの欧州式圧着端子は、押しつぶす割合が僅かな分、それに相応しい適度な硬さの材質で。。
 六角圧着用のハンドツールは、どれも油圧式の重厚な品になり、手が出ない値段なのです!ww

 対応として、A案)圧着せずにハンダを流す   B案)日本式の工具で六角圧着もどきに?笑

 どうするか色々悩みましたが結局、2SQ専用の六角金型を手製して、バイス ( 万力 ) 使って圧着しました。
 アンテナ同軸ケーブルF型コネクター専用サイズの六角圧着工具なら掃いて捨てるほど見つかるんですがねぇ~。^^;

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