ファルクラム | クルマ屋 奮闘記

ファルクラム

自動車部品で言うところの「ファルクラム」とは何ぞや?
読み聞きして、これがどの部位のパーツの呼称なのか、ピンとくる整備士は非常に少ないのではないでしょうか。
画像検索すると、戦闘機の画像が大量に出てきます。 ミグ29の愛称もファルクラムみたいですね。(笑)


FULCRUM : てこの支点

クラッチフォークの中央部が嵌まる、トランスミッション側の突起部は、まさに梃子の支点になっており、このパーツの正式名称はファルクラムと呼ぶのだということを、下記のクラッチ系不具合で頭悩ますまで実は私も知りませんでした。
2000-02製 XZU307M 日野デュトロ
とある中古車業者さんがオークションで入手してきた車両の車検整備をご依頼下さったのですが、
クラッチペダル踏んだフィーリング、自動調整の油圧式にもかかわらず、すこぶる違和感ありまくり!
フロア近くまで深く踏み込むと、なんとかギヤチェンジは出来たので、自走可ではあったものの、
遊びやクラッチミートの感覚は、このままユーザーに引き渡せれる感じではありませんでした。



クラッチペダル/クラッチマスター/クラッチレリーズなどを順に診ていきましたが、特に異常なし。
となると残る可能性は?


上のイラストは日野デュトロ君のクラッチ構成パーツ。
クラッチフォークと、ファルクラム、ピンには、A型とB型の二種類がある・・・・・
これを見て確信しました。 きっと違うタイプの組み合わせになってしまってる?!
こうなる原因は、中古品/リビルト品トランスミッションに換装されたのではないかと推理しました。

自分の予想を信じ、気合一発ミッション脱着!
結果は見事的中で、ファルクラムだけが本来Aタイプであるところ、Bタイプがついていました。
      日野デュトロ用ファルクラム ( 別称:クラッチフォークレバーボール ) : 440円+消費税

これ・・・・ 厄介なのは、違うタイプ同士でも、何の問題もなく嵌まってしまうということ。
先入観もって比べてみて、少し座りが悪いかなと思う程度。 だから普通は気付かないでしょう。
しかし、てこの支点というのは超重要で、微妙な差異でも大きな変化として表れるのですね。



私自身この経験はとても勉強になりました。
知識を得た後、他の車両を見渡していたら、それまで見逃してた複数の類似例を解決できたからです。
ということは案外レアでもないような?


上の画像は、過去記事に何度か登場している117クーペ君のファルクラム新旧。
以前に、他社がストックしていた中古良品トランスミッションに載せ替えてもらったとのこと。

この例のクラッチは手動調整のワイヤー式であったのが幸いしたのか、操作感は普通でしたが、
やはりクラッチフォークの据わりが悪く、エンジン振動で踊ってしまってガチャガチャ異音が!
踊り止め対策として、鉛直方向に無理やり適当な長さのスプリングが追加されてました。
その状態のまま、私がクラッチオーバーホールを承るまでの間、長きに渡り目を瞑ることに・・・

向かって左が今回取り寄せた品。 ( 部品まだあったんですw 470円+消費税 )
頂部が平たくカットされていますが、これは「グリス溜まり」といって長期潤滑目的の工夫。
それを勘案に入れ、残りの湾曲面を比較すると・・・・・
これ、疑ってかかると僅かに違うように感じますが、ぱっと見絶対に判らないレベルだと思います。
ですが論より証拠で、右の現車の品には、面で当たるべきが線接触だったことを示す擦り傷が。
この例ではクラッチフォークとファルクラムをセット交換。 見事、正常な状態に復活しました♪



右の画像は、1996.01製 三菱キャンター FE507BT
36万キロ走行した後のファルクラム。

この相手側になるクラッチフォークには小穴が開いているのですが、ちょうど小穴の分を残して、直接擦り合わさる部分の摩耗がかなり進んでいます。

    FE507用ファルクラム : 380円+消費税

正規品であっても、このように摩耗している場合もまた交換が必要になってくると思います。

しかし作業の折り返し地点、トランスミッションが降りてから、
ファルクラムの摩耗に気付いたからといって部品注文するのでは後手ですねぇ。。
クラッチオーバーホールという作業は、せいぜい一泊二日が関の山。
普段、馬車馬のように走ってるからこその数十万キロ、それ以上はなかなか日数貰えません。
そういう哀しい理由で、見て見ぬふりで交換しないケースというのは決して少なくないでしょう。
それを未然に防ぐには?

ここで各種ファルクラムの部品価格にご注目! 僅か500円前後のパーツじゃないですか。
クラッチフォークのほうは若干値が張り数千円もしますが、出来ればセットで。
あと、蛇腹状のフォークブーツ、これも破れることが宿命なので、良くも悪くも3点同時交換。

見積に計上して提示しておき、入庫確定時点で予め取り寄せておいて吉だと思います。
勿論、低予算でとおっしゃる場合もなかにはあり、そうなると・・・・
酸いも甘いも知りつつも、結局あとで右往左往することになったりするかも。 ^^;

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