ヒートカットパウダー | クルマ屋 奮闘記

ヒートカットパウダー



上の画像はエンジンの排気系統、エキゾーストマニホールドエキゾーストフロントパイプ

元々は φ6mm のボルト3本によって固定された遮熱板で、おおまかに覆われていたそうですが、
長い年月経るうちに、高熱をもろに浴びる影響で腐食が進み、薄い素材のそれは複数箇所裂損。
金属質のビビリ音が気になるので、割れた遮熱板は取っ払ってしまったとのこと。
こういう行為はNGです・・・・・

 自動車メーカーは日々コストダウンに余念がなく、内装以外にはほぼ無駄な部品がありません。
 簡素に見える薄っぺらな遮熱板でも、それがそこに無いと、輻射熱で近傍のパーツ類に悪影響が。
 しかし、えいやっと外すのは、せいぜい数分仕事。 しかも自分でやればコストゼロ!
 それでいて場合によっては、数ヶ月~数年、表面上何も問題なく乗れてしまったり。。
 少し古いエンジンだと、エキマニ遮熱板の細いボルトは緩んでくれず、高確率で折れたりしますし。
 事故修理以外の理由で、メーカー純正品の遮熱板をオーダーする人は非常に少ないんじゃないでしょうか?
 そのせいか、割と早い段階で製造廃止喰らいやすいように思います。><

実は冒頭画像は、昭和55年製 いすず 117クーペ PA96 、
車歴30年超のエキマニ等オリジナルパーツは、全体が錆で赤茶けて風合い醸し出してました。
縦置き直列4気筒エンジンで、排気左出しというレイアウト。
ヒーターホースやウォーターバイパスホース、クーラー低圧ホースなどがエキマニ近傍を通り、
遮熱板なしだと芳しくない状況ながらも、あれよあれよと数年経っていたのですが。

古いクルマは、エキマニ~フロントパイプ間のスタッドボルトの強度が弱く、割とよく折れました。
この117クーペも例に漏れず、車検整備の際に1本折れているのを発見。
折れ込みスタッドボルト交換修理のために、エキマニ要脱着ということになったので、
じゃぁ遮熱対策、脱着ついでにどないですか? ということになったのでありました。

 この折れ込みスタッドボルトの対処は、それだけで十分一つの記事になるような難事。
 残骸を観察すると、いかにも低グレードっぽい金属素材なので、折れやすいのも納得。
 このようなケースに限っては、元と同じ純正品を使うのは余りにも芸がないと思います。
 代替品として、トヨタ供給の焼きが入って高品位なスタッドボルトに全数交換しました。



遮熱対策を考えるにあたっては、エキマニ表面温度の考察から着手すべきでしょう。
ところがこれ、中々どうして一筋縄ではいきません。 個々のエンジンで随分違うっぽいからです。
ある資料によると、燃焼室直後の排ガス温度は、約900℃前後と書かれていましたが、
NA(自然吸気)と過給器付きでは、後者のほうが随分高くなるようですね。

BILLION スーパーサーモバンテージ70 :
タコ足状ステンエキマニに包帯のように巻き付ける素材。
耐熱温度950℃、ノーマルからライトチューンNAに最適と表記されています。

赤熱したステンエキマニは割りと目にする光景です。
素材の肉厚と熱伝導率などが複雑に絡まった問題なのですが、赤熱してしまうようなNAエンジンのステンエキマニ表面の耐熱要求温度は 700~850℃ と推測。

一般的に流通しているマフラー用耐熱塗料は、上限600℃程度の表示ですので、
3500rpm、暖機数分間ごときで赤熱しかかるエキマニに対しては、明らかに耐熱性能が足りません。
なので昔は、遮熱板を取り付ける か、バンテージ巻き かの二択だったのですが、
興味深い新素材が容易に入手出来るようになり、第三の選択肢=遮熱塗装 もお勧め。^^



無孔質真空球体微粒子セラミック
NASAスペースシャトル、大気圏再突入に複数回耐えるべく開発された耐熱タイルの根幹技術。
中身真空の丸く細かいセラミック粒子群は、原理的に遮熱・断熱性能に非常に優れています。

民生転用技術としては、真空ビーズ粒子径 0.0005mm ほぼ均一で非常に高品質なものから、
中身が真空ではない多孔質セラミック(単なる中空バルーン)の廉価品まで多種多様。
今回選んだ品は、ヒートカットパウダー
粒子径 0.03~0.15mm と多少ばらつきあるものの中身真空であることをしっかり謳い、
塗料混合前の粉として容易に入手可能。 耐熱性能は混ぜ合わせる塗料に依存するとの事。

 余談ながら耐熱塗料の話。
 耐熱塗料・特殊塗料のトップシェアを誇るオキツモ株式会社さんのFAQコーナーを読むと・・・
 「耐熱1000℃の塗料はございません。しかしながら、塗装される素材が金属であれば、素材自体1000℃の
 耐熱性がないと思われます。素材と実際にかかっている温度の確認をお願いします。」 となっています。
 しかしながら、当のオキツモさんの製品に、耐熱1000℃のペイントマーカーや、
 耐熱3000℃のロケット発射台塗料があったりして実に興味深い話です。^^;
 ステンの融点は1400~1500℃、鋳鉄ならば1150~1250℃といったところでしょうか。
 「耐えられる」と称するための判断基準、どんな定義かによって、きっと大きく異なってくるんだと思います。
 ということは? 一見同じ耐熱温度の塗料でも、販社によって随分と実質性能に差があったりするのかも。。

膜厚が大きいほど遮熱性は有利になるので、スプレーするよりも筆塗りがお勧め。
何事も過ぎたるは及ばざるが如し。 パウダー混合比を最大超さない程度になるべく高め、
塗っては乾かしまた塗って・・・ 最低でも3度塗り、余裕があるなら更に重ね塗りを。
このため単日では完了しませんが、仕上がると白っぽい陶器に包まれたような感じになります。

後日談ですが、大阪から京都までの走行直後、ボンネット開いて拝見する機会を得ました。
非接触温度計を、この時ばかりは欲しいと思いましたね。(笑)
だから完全暖機後のエキマニ表面温度、正確な数字を書けないのが残念ですが、
指先ちょんではなく、手の平全体で余裕で触ることが出来た・・・・・
と表現すれば伝わりますでしょうか。 素晴らしい遮熱効果だと思います。^^

 高い遮熱性 = エキマニに熱がこもる場合の長所短所:
 ・ 薄いステンパイプは若干割れやすくなる
 ・ エンジンルーム内温度の上昇を防ぐ
 ・ 排気の流速が上がる → 排気効率が良くなる
 バンテージを巻くことが難しい鋳鉄製エキマニには、まだ新車のうちから遮熱塗装してみられては?!

ô